「A2/AD」と「ASB」

「A2/AD」と「ASB」

半田 米軍は、南シナ海沿岸の友好国の海軍力も含めて実行能力のバランスを取る外交戦略「CARAT(Cooperation Afloat Readiness and Training)」を展開している。

マクデビット 「CARAT」はそれなりの効果を挙げているが、主権が絡むとナショナリズムが頭をもたげる。 軍事力が増せば緊張関係が変化し、意図も変化するかもしれない。だから米国は長い時間をかけ、アジア諸国の関与を促し、協力的な態度を習慣として中国に 培ってもらおうと努力してきた。

半田 軍事的安全保障の大事な鍵となるのが「A2/AD(Anti-Access/Area Denial)」と「ASB(Air Sea Battle)」。「A2/AD」は米国を中心とする海洋戦略グループが、中国の国防戦略を想定したもので、「A2/AD」を空軍・海軍の攻撃能力を総合して突破する戦略が「ASB」だ。この軍事的パワーバランスをどう考えるか。

香田 中国がアジアで影響力を行使するためにつくられたのが、安全保障戦略の核となる「A2/AD of the USA」だと推測する。米国は第2次大戦以降、航空戦略を有効に使った。今後、米国の能力を最大限に発揮できる鍵となるのは、世界1位の力を持つ空軍・海 軍をいかにうまく使うかで、それが中国の「A2/AD」に対する米国の一つの回答だろう。

日米中の協力こそ 相互の利益

半田 中国は米国を、米国は中国をどう見ているのか。

 中・米・日3ヵ国が相互に戦うなら、そこに戦勝国はなく、みな敗者となる。われわれの安全保障関係は、協力関係あってこそ互いに利益がある。中国は防衛能力を強化してきたが、西太平洋から米国を追い払う意図はないし、積極的・建設的な活動を望んでいる。日米 は強力になった中国を受け入れ、中国は増強した軍事力にふさわしい正しい行動で応える。この両方向の受け入れが重要だ。長期的には、われわれの行動でわかっていただけるはずだ。

マクデビット 中国に米国を排除する意図はないだろうが、防衛能力の強化も事実。軍事力が向上したら、その意図も変化しはしないか。その備えも必要だ。

ゴールドマン 海兵隊としてイラクやアフガニスタンで従軍した経験がある。近年、米国防総省は予防行動の価値 を強調するようになった。アセアン同盟国に対し、多国間会議を開催したことにも示されている。わずかな予防貢献で、本格的な戦闘を防げれば大きな効果がある。米国がアジアにおいて穏やかな状況をつくりだす役割を長年続けたから、アジアの大成功があった。引き続きその役割を継続するのがわれわれの務めだろう。

半田 海軍トップの皆さんは実に友好的だが、日中同士の対話が十分になされていないのが一つのポイントだ。友好的に対話できれば敵対意識も弱まる、そういう状況が、太平洋地域の安全保障維持に重要だ。

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