東アジアの海洋問題

深刻化する 東アジアの海洋問題

半田 近年、南シナ海・東シナ海などでの中国海軍の行動が、沿岸諸国に脅威となっている。まず米国海軍の立場から、基本的な考えをお聞きしたい。

マクデビット 北朝鮮問題を除き、全ての東アジアの安全保障問題は海洋問題で、海事・領土問題の性格を持っている。私的意見だが、米国とこの地域の同盟国にとって最も大きな問題は、東アジアにおける海軍力のバランスの変化だ。中国の防衛力が高まり、防衛線がさら に沖へ張り出せば、それに釣り合う、機動力に優れた安全保障を同盟国に提供することが米国の責任だ。同盟国との関係を理解する最も良い方法は、その責任を分担すること。私たちは「役割と任務」といい、端的にいえば日本は盾、米国は槍(やり)の役割を担う。

香田 中国の今後の海洋活動に非常に関心がある。中国は20年前に比べ、おそらく数十倍も海軍に投資しており、10~20年後には相当大きな力を持つだろう。そうなると今までのバランスは完全に崩れる。

半田 国益がぶつかったとき、軍事的バランスが取れてないとフェアな話合いができない。このままだと勢力逆転の可能性がある。2008年以降、新たな情勢の変化について、日米で政治的・軍事的対応が進んでいないことが懸念されるが。

マクデビット オバマ大統領は昨年11月、アジアに注目した軍事力の再バランス計画を発表。その軍事予算の増加率を減らす計画は、アジア以外の地域に適用されるとしている。しかし、今後の議会の動向や大統領選挙の展開により変化する可能性はある。

香田 日本の年間防衛予算は500億㌦(約4兆円)。一方、米国は今後10年間で5000億㌦(約40兆円)の軍事予算を削減し、さらに議会からも同額の軍事予算削減を求められている。
 問題は、予算削減の中、日米でどう海洋での力のバランスを保つかだが、互いの新体制づくりの具体的な話合いがなされていないし、調整するメカニズムがないことが一番の問題だ。

増強する中国海軍

半田 海軍力を増強する中国海軍についてお話しいただきたい。

 中国の対外貿易による経済発展に、海の安全保障は不可欠。海軍力の増強は自国防衛の権利を行使するもの だ。中国海軍は日本や米国に比べて遅れており、急速な成長ゆえに脅威と映るのだろう。われわれ3ヵ国の任務は海軍大国として協力関係をつくることで、競争ではない。大切なのは能力ではなく、それをいかに、どのような意図で使うかだ。

半田 私は中国の大学も卒要したので中国人の思考も理解してるつもりだ。しかし海軍増強に関して、中国と日本や欧米の理解の間にはかなりギャップがあるのでは。

 中国国内は問題が山積みだし、東シナ海などでの中国の行動について、国民は政府は弱腰だと捉えている。この落差は不自然なほど大きい。他国とコミュニケーションを取り、互いの意図が明確になれば安心するのではないか。

半田 中国政府・海軍が国民の支持を得られるように、国民に対する啓発活動が必要ではないか。日本にとっては、中国の何が脅威か。

香田 中国の海洋での行動を、周辺諸国は高圧的に感じている。ある意味、意図は一晩で変わる。日本が一番心配なのは、中国の<能力増強×意図>の将来像が分からないこと。今後、話合いで信頼感をつくっていくことが重要だ。

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